戯れ

・付き合っている前提。
・直接表現はないので、R15にも満たない。
・でも雰囲気が怪しい。というわけで裏部屋行き。
・表部屋にある「夏の幻影」の続きっぽい。
・めちゃくちゃ短い!

以上、大丈夫な方はスクロールどうぞ。










 マイルームのベッドの上、ロビンに背後から抱き込まれた立香は、頭や髪に降ってくるむず痒い感触に思わず口を開いた。

「ロビンってさ、キスするの好きだよね」
「……オレそんなにしてますかね?」

 キスを止め、立香の頭に顔を埋めながらロビンが尋ねる。驚いた。まさかの無自覚だったらしい。

「かなりしてるよ。二人きりの時は絶対してる」

 それはもう息をするのと同じくらい。今だって指摘しなければ、気が済むまで止まっていなかっただろう。付き合い始めはそこまで酷くなかったはずなのだが、時間が経つにつれタガが外れてしまったらしく、最近は引っ付いたり、キスしたりとスキンシップが過剰気味だ。
 いや、元々はそういうのが好きなんだろう。趣味はナンパだし。英雄、色を好む、とはよく言ったものだ。

「そういえば、この前、刑部姫と水着のジャンヌオルタが作った同人誌でね、キスする場所にも意味があるってお話読んだんだ」

 キス、で思い出した話題を振る。ロビンの長い指が、立香の毛先をくるくると巻いて遊んでいる。

「へぇー。例えば?」
「えっとね、髪とか頭は思慕、だったかな。おでこが友愛。こめかみは慰めだってさ」

 物語のヒロインが恋愛トークの中で披露していた知識を思い出す。ロビンはなるほど、と言いながら、再び立香の緋色の髪に口付けをした。

「他にはないんですか?」
「……頬は親愛、顎は恥じらい」

 顎を取られ、頬に軽くリップ音が鳴った。

「ちょっと、ロビン」
「どうぞ続けてください」

 ロビンはニヤニヤと笑いながら、立香に先を促した。

「うー……。手の甲は敬愛だけど、手のひらにしたら懇願の意味らしいよ」

 次いで手の甲にキスをする弓兵に、堪らず掴まれていた手を、ぱっと振り解く。
 これはまずい。このままだと流されてしまいそうだ。わざと意味ありげな場所だけに口付けるロビンを睨みつけた。

「他は忘れちゃった! この話、終わりにしよ……っ!」

 しかし再び手を掴まれ、手のひらを軽く食まれた。ロビンの歯の硬い感触が、じわりとした痺れを伴って腕をのぼっていく。

「マスター、本当は全部覚えてるんじゃないんですか?」

 嘘はいけねぇですよ、とロビンはそのまま立香の手首、腕と順にキスの雨を降らせる。辿り着いた首筋に舌を這わされ、艶めいた声が立香の口から漏れ出た。

「他の場所の意味もきちんと教えてくれますか? 生憎、そういった教養はねぇもんで」

 吐息混じりに皮膚の薄い耳を噛まれた。甘い誘惑を孕んだ言葉に、体がびくりと反応してしまう。

「あの……、今日はするつもりなかったんだけど」
「今更でしょ?」

 やっぱりこうなるんだよね……。ベッドに押し倒された立香は、目蓋を閉じ、何回目になるか分からない唇へのキスをそっと受け入れた。



手首は欲望、腕は恋慕、首筋は執着、耳は誘惑だそうで。
一時期ポイピクに掲載してた話。
カプにキスさせるのが好きなので、書いててめっちゃ幸せでした。深夜テンション怖いなぁ。
2022.1.27