羽のような

 迷い込んだ不思議な美術館の薄暗い廊下。
 襲ってくるゲルテナの作品をなんとか振り切り、一息つけたと思ったのもつかの間、糸が切れたマリオネットのように栗色の髪を持つ少女の体がその場に崩れ落ちた。

「イヴ!」

 慌てて駆け寄り名を呼ぶも、イヴの薄い瞼は閉じられたまま。
 怪我をしたのかと嫌な予感が頭を過ぎったが、白いブラウスに覆われた胸が規則正しく上下していることから、どうやら眠っているだけらしい。
 無理もないだろう。
 いきなり薄気味悪い場所に連れて来られた上に、異形の物達に命を狙われているのだから。
 大人である自分でさえ怖いのに、子供のイヴがどうしてその恐怖に耐えうることができるだろうか。
 ギャリーはぐっと両の手に力を込めた。
 痛いくらいに握られた拳は、自分への叱責だ。幼いイヴのことを推し量ることが出来なかった自分への戒め。
 気丈に振る舞ってはいるが、この子は子供なのだ。まだたった9歳の、か弱い女の子。

 この子は必ずアタシが守る……。

 取り敢えずここで立ち止まっている訳にはいかない。扉で隔てられていると言っても、いつ先ほどの絵画や像が追ってくるとも限らない。
 ギャリーはイヴの細い首と膝裏に腕を回し、力なく倒れている体を持ち上げた。

「ちょ!軽っ!」

 予想以上に軽かったイヴに、思わず驚きの声を上げてしまった。
 イヴの身長はギャリ-の身長の半分ほど。この歳の子供にしたら背の高い部類に入るとは思うのだが、それにしては軽すぎやしないだろうか。

「ちゃんと食べてるのかしら、この子……。起きたら何か食べさせてあげたいわね」

 そういえばポケットにキャンディーが入っていたはず……。禁煙用に持っていた飴で悪いが、この際それには目を瞑っていてもらおう。
 喜んでくれればいいけど、と心の中で呟きながら、イヴを抱えたまま薄暗闇の廊下を一人歩き出したのだった。



え、2013年……?
Ibってそんな昔なの!?
時間が経つの早すぎるなぁ……。

以下、pixiv投稿時のせとりのコメント

「ゲームでは描かれてなかった時間のお話を妄想。
やっぱり倒れたイヴちゃんをギャリーさんはお姫様抱っこで運んだのかな…。
何それ羨ましい!
ギャリーさん、俺にその役を代われええええ!!!
イヴちゃんはものっそい軽いと思います。
……ただの私の願望です」



これをSNSで叫んでたのか……。どうかしてたな、当時の私。
でも……。うん、これは……。
あんまり変わってないですねw

2013.7.14 pixiv掲載
2022.3.13 サイト掲載