なんでもない日 Plus
・「なんでもない日」の続きを書いてみました。
・かっちりした服を乱していくのが好き。
・ロビンさん視点。
・アトラス院の礼装、男女ともに可愛いですよね。女子は絶対領域とスリットがよいと思います(マジトーン)
口づけから始まった行為は、いくばくかの性急さをともないながら、ベッドへと場所を移していた。
組み敷いた小さな躰。神秘を纏った紫色の礼装のボタンを、ゆっくりひとつずつ外し、きっちり締められた首元のネクタイに手をかけ、結び目を解いた。
しゅる、という衣擦れの音。くつろいだ胸元から手を差し込み、下着もそのままに、左胸の先端に触れる。窮屈な中での愛撫に、立香の躰がピクリと、かすかに反応した。
それと同時に、立香の耳から首筋を舌で辿ると、彼女の口から耐えきれなくなった熱い吐息と、まだ低く余裕のありそうな声がこぼれた。
「ロビン、ちょっと……」
額とイタズラをする腕に、立香の静止の手が添えられた。しぶしぶ顔だけを離すと、不安そうにこちらを見つめる金色があった。
「礼装が皺になっちゃうよ。汚れるかもしれないし、ちゃんと脱がないと」
そう言って、かぶっていた帽子をベッド上へと避難させる立香。それは押し倒した時に立香の頭から外れていた。しかしすぐ傍に落ちていたため、このまま事を進めると、気の毒になるほど押しつぶされ、ヨレヨレに変形してしまう未来があることなど明白だった。
物は大切にする。それは当然のこと。
そして礼装も物である。大切にしなければならない。
しかし───なぜだか、とても気に食わない。
嫌がらせをしつつ攻めこんでいたのに、大してダメージを負ってなかった敵を前にしたときの感覚。
あるいは、タブレット端末に視線が釘付けになっている者に話しかけるときの感覚。
ああ、それだ。それが一番近い。
つまり立香には礼装の心配をするぐらいの余裕があったってコトだな。
なるほど。───ほう、なるほど。
「今回はこのままで。だってオタク、オレのプレゼントなんだろ? じゃあオレの言うことを全面的に聞くのが、プレゼントの役目ってもんでしょ」
自分でも呆れるくらいの意地悪な笑みで、口元が吊り上がっているのが分かった。そして照明は煌々とついたままだ。立香にもオレの表情が見えたらしく、彼女は青い顔で、ベッドの上方へと逃げようとしていた。
そうはいくかよ。
「んっ、ぁ……胸、いじらないで! あ、やぁ!」
両足で立香の躰を挟みこみ、逃げられないようにしてから、ブラジャーを上にずらし、双丘の先端を刺激した。円を描くようにくるくると、ときおり強く扱き、押しつぶすように爪で掻く。執拗に胸の飾りだけを責めたてていると、立香の艶めいた声に焦りの色が混じってきた。
「や、やだ……おねが、……やめ、あ、あっ、───んぅっ!」
眼鏡のレンズの奥で、ぎゅっと固く閉じられる瞼。一気に薔薇色に染まる頬。はぁ、はぁ、と乱れた呼吸で上下する胸。
回数を重ねれば重ねるほど、慣れとともに感じやすくなる躰。
たまらない。これだから、彼女に関わるのをやめられない。
「軽くイキました?」
愉快そうに問いかけると、きっ、と睨みつけてくる濡れた双眸。照れ隠しの虚勢に、言いしれぬ陶酔を感じて、ロビンフッドは薄く微笑った。
間髪入れずに、立香の太ももに手のひら全体で軽く押すように触れる。しっとりと汗ばんだ肌が、強請るように吸いついてきた。
「いつも気になってたんですけど、この礼装のスカート、短すぎません? ご丁寧にスリットまで入ってるし」
思わず鳴りそうになる喉をごまかすため、太もも横のスリットから、スカートに手を入れる。
「戦闘中は……ちゃんと短いスパッツ履いてるよ。気になって集中できないと困るから」
「へぇー。んじゃ、今履いてないのはワザとって訳だ」
と言っても、さすがに下着は身につけている。自分が指摘したのはスパッツの存在だ。
「そう、だけど……」
だってマイルームだし、ロビンにしか会わないし、と、もごもご言葉を並べていた立香だったが、やがて上目遣いのような視線で、一言、火の消え入りそうな声で問いを返してきた。
「……引いた?」
「積極的な女が嫌いかって質問ですかい? 立香からはオレがそんな風に見えてます?」
「見えない。全然」
きれいな即答。しかも首振りつきだ。一点の曇りもない信頼に、場にそぐわない吹き出すような笑いがロビンフッドの口から漏れ出た。
「だろ? だったら、これ以上分かりきった質問はなしってことで」
オレだって楽しみたいんでと告げると、立香はため息をひとつ。そして諦めたようにそっぽを向いた。
「絶対しわくちゃになる」
「あとで綺麗にしときますから」
立香の負け惜しみみたいな言葉に苦笑する。頬にキスしながら、下着だけを取り去り、熱くトロトロに蕩けた秘所へ指を侵入させた。
「あ、ぅ……んっ、ふ、あっ」
潤んだ膜がはっていく立香の瞳と仕草は、まるで自分の涙の海で溺れた少女のようだ。必死に酸素を求めて口を開く様は、指の抽出によい与えられる快楽の波にのまれないためか。ならば、スカートの紫を、さらに濃い紫紺へと変色させる愛液は、彼女の流した恍惚の涙だろうか。
加えて、アトラス院の礼装は、他の礼装に比べてフォーマルな印象だ。
おまけに眼鏡も標準装備とくれば、真面目さにも拍車がかかる。そして真面目であればあるほど、秘匿されればされるほど、乱して暴きたくなる欲求も高まってくるのが、捻くれ者の困った性分である。
より溺れさせたくて、服の合間から、ちらりと覗く胸に顔を寄せる。谷間に近い場所に唇をつけ、口を開き、少し強めに吸い上げた。
途端に上がる立香の高い声。かすかな痛みに悶える躰が、わずかにしなった。
「あと……残っちゃうから、だめ……っ、あ!」
「服に隠れて見えやしませんよ。水着でも着ないかぎりは、な」
経験則ではあるが、夏の特異点まではもう少し時間がある。いつもの水着礼装を着用する頃には、こんな可愛らしいキスマークなど跡形もなく消え去っているだろう。
「そういう、問題じゃ、なぃ……! あ、も、やだぁ! ロビンが全然、言うこと……聞いてくれな、い……」
語尾が震え気味になっているのは、達する一歩手前だったからだ。指を引き抜き、目元を隠してしまった細腕を掴み、横に移動させる。ちょうどラッピングの紙を開けるように、立香の顔をあらわにした。
かちあう視線。
彼女の瞳から、はらはらと透明な液体が流れ落ちた。
「プレゼントに人権は適用されないんで、諦めてくだせぇ」
「横暴だ。軽々しく誘わなければよかった……」
そんなつれないことを言わなくても、という意味で、器用に眼鏡のフレーム部分を避けて、彼女の涙を舐めた。
続いて唇を奪う。塩気をまとった舌が口内で絡み、唾液の甘みを際立たせた。
と、されるがまま甘受していた立香が、ぐいっとロビンフッドの躰を両手で押しのけた。
そして即座に眼鏡を外し、帽子の横に置いた。いや、置くというよりも、立香には珍しく、なかば放り投げるような、ぞんざいな所作だった。
「ありゃ、眼鏡外すんですか?」
「だってロビンとキスするのに、当たって邪魔なんだもん」
それぐらいの勝手は許してと、立香は困り顔で腕を伸ばし、ロビンフッドの首にそれを巻き付け、もう一度キスをせがむように引き寄せた。
困ったのはロビンフッドの方だった。
今日は服を着たまま、立香をいじめ倒そうと画策していたのにも関わらず、こうしてたった一つの言動と行動で、いともたやすく決心を折りに来られるのだからたまったもんじゃない。
「ちょいと気が変わりました。やっぱ服、邪魔ですわ。全部脱いじまいましょう」
「なんで!? いきなりどうしたの!?」
自身の霊衣をすべて脱いだあと、突然の心変わりにクエスチョンマークが浮かんでいる立香の礼装を、破かない程度の性急さで剥がしていく。厳格が暴かれた亀裂から生まれる、上気した立香の肌を堪能しながら、あっという間にお互いが一糸まとわぬ姿になった。
「ねぇ、なんのスイッチが入ったの!? ちょっと怖いんだけど!?」
「いえいえ。プレゼントをきれいに開封しないのは、贈ってくれた相手に失礼だと考え直しただけですよ」
「心にも思ってない気がするのは、私の勘違いかな!?」
きゃんきゃん吠える立香の口を塞ぎながら、泥濘に己の怒張を埋め込んでいく。
ひときわ大きく、くぐもった声が、立香からあがる。それを飲み干し、舌を絡ませながら、ゆるゆると腰を動かした。
物は大切に。
プレゼントならば、なおのこと。
ラッピング付きで、「Eat me!」なんて宣うのだ。ならば、できるかぎり誠心誠意、優しく扱うのがマナーというものだろう。
自分はそんなものを率先して守るほど真面目ではないのだが、そこはそれ、弁えることを知らぬほど粗野ではない。
あくまでゆっくりと律動する。決して最奥は突かず、浅い入り口付近を行ったり来たりする。くちゅ、くちゅ、と淫靡だが、柔らかく穏やかな水音が響く。それと同時に、組み敷いている立香が非難するような目線を送ってきた。
「ひ、あ……あ、ぁん、んっ! ロビ、ン……わざ、と……だよ、ね!?」
「何が? プレゼントを丁寧に扱ってるだけっすよ?」
ざらりと絡みついてくる肉壁に、早く穿ちたい欲求を押さえつけながら立香を責め立てる。
立香の腰が揺れる。もっと刺激が欲しいのに、変な気遣いにもてあそばれて、もどかしさの方が勝っているようだ。
そんな彼女の左手を取り、指先に口づけながら、まっすぐに目を見つめる。
こういう時の誘い方は何でしたっけ? と、静かに問いかけるように。
「ロビン、足りないよ。もっと……もっと強くして?」
「りょーかい。───マイ・マスター」
自分よりもはるかに細い腰を掴み、強めに奥を打ち付ける。
その瞬間、立香の躰が硬直する。自身を包む膣壁が、よりきつく、うねりをともないながら締め付けてきた。
しかし律動をやめるつもりは全くない。むしろここからが本番だ。心行くまで、立香(プレゼント)を味わい尽くさなければ。
ロビンフッドは、ひっきりなしに奏でられる立香の嬌声を耳で愉しみながら、果てを求めて彼女の躰を貪り続けた。
※
脱ぎ散らかした礼装を両手で広げながら、裸体で座りこむ立香が、不機嫌そうに不貞腐れていた。
「やっぱり変な皺が入ってるし、汚れちゃってるよ……」
だからあれほど言ったのにと、プリプリと立腹している彼女の手首を引っ掴み、布団の中へと引きずり込む。
抵抗の薄い朱色を撫でていると、かすかに「もう……またそうやって誤魔化す」と呆れた声が聞こえた。
「はいはい。目が覚めたらその皺も汚れも、ちゃんと消えてると思うんで。今日はもう寝ましょう」
きっと妖精さんがやってくれますよーと、子供でも信じないような嘘を吐きながら、ロビンフッドは、よくわからないうちに突然もらえた誕生日(仮)プレゼントを、手放さないようにぎゅっと腕の中に閉じ込めた。
どーでもいいあとがき
「あれ? 続きが見あたらないんだけど!? もちろんあげるよな!? なぁ!?」って声が聞こえた気がしたので、さらさらっと書いてみました。
自分へのご褒美と称して好みのシチュとかフェチを盛り込んだ結果、このような仕上がりに。どうして攻め視点になってしまうんだろう? 異端な気がするんだが……。(こういうの基本的に受け視点が多いですよね)
それはそれとして。せとりはね、きっちりかっちりしたアトラス院の礼装を着ているぐだ子ちゃんが、ロビンさんに悪戯されているところを見たかっただけなんだよ……。(断罪チョップ)
2023.6.11