Step3

・立香ちゃんが一人でしてるだけです。
・めちゃんこ短い。
・それでもいいよって方だけ続きをどうぞ。












 ドサリとベッドに腰掛けた立香は、ふぅーっと長い溜息を吐いた。
 今日も今日とて、それなりに忙しい一日だった。朝から資材集めはもちろんのこと、昼は微少特異点後に発生したゆらぎの修正。夜はどこまで逃げても追いかけてくる報告書の山。途中、カルデア内で起こった騒動の解決まで任された時には、忙しさのあまり目が回って倒れそうになってしまった。とりあえず渦中いたBBちゃんには、いい加減にするように厳重注意してみたけれど、おそらくあまり効果はないだろう。まるで腹いせのごとく、いつもより悪戯がグレードアップしていた気がしたので何かあったのかと問いかけてみたが、「特に変わったことはありませんよ? センパイの気のせいですー」と、綺麗にはぐらかされてしまったのは先程の話だ。
 まあ深く考えてもしょうがない。彼女にも色々とよんどころない事情があるのだろう。基本的に悪戯の規模が町内会レベルだから、あまり問題はないという結論を出し、頭の中の箒で忘却へと掃き捨てた。
 パタリと背中からベッドへ倒れ込む。疲労が全身に行き渡るのを感じた後、ぼうっと見慣れた白い天井を見つめながら別のことに思考を巡らせた。

「……あ、そういえば今日は来ないって言ってたっけ、ロビン」

 夕飯の後、立香をこっそり呼び出した弓兵は、「久々にアウトローで集まってカードゲームする予定でして。そんなワケで、今日の夜は別々です」なんて告げてきたのだ。
 しかも耳元で。
 あの無駄にいい声で。
 鉄、いや鋼の精神で平静を保った自分に称賛の拍手だ。だって、どう考えてもロビンのあの声は、二人きりの時にしか聴かせない声質だったのだから。
 もしかしなくても、絶対にからかわれている。分かってはいるけれど、男女の駆け引きとか色事のノウハウとか、その他すべてにおいて圧倒的な差がありすぎるため、付き合ってから今に至るまで、ずっと負けが込んでいる。勝てたためしなんて一度たりともない。きっと現在進行形で立香が悔しさのあまり歯噛みしていることも、森のナンパお兄さんにとっては想定の範囲内なのだろう。いや本当にもう、まったくもって度し難い。……この場合はロビンに対してではなく、そんな経験値豊富でふわふわな人を好きになってしまった自分に対して、なのだけれど。
 とにもかくにも、今夜のマイルーム来訪者は一人もいない。ならば必然的に部屋の鍵を開けておく必要もないのは、火を見るより明らかだ。立香はベッドから立ち上がり、壁の端末を操作して部屋の照明を落とし、鍵を閉めた。
 もう今日はこのまま寝てしまおう。
 立香は暗闇の中を感覚だけで歩き、たどり着いたベッドへ真正面からダイブする。
 シーツと薄いブランケットの間隙に潜り込み、胎児のように躰を丸めて瞼を固く閉じた。
 ──、ごろん。
 ────、ごろごろ。
 寝相を変えて、必死になって頭を空っぽにしようと努めるが、なかなか意識は暗闇の中に沈んでくれない。それどころか躰の内側に生まれた燻りが、じわじわと延焼のように理性を焦がしていく。

「どうしよう、全然眠れない……」

 目は恐ろしいほど冴えている。しかし妙なモヤが頭にかかっているみたいで考えがまとまらない。どこにも発散することのできない衝動が渦を巻いて、どこかに飛んでいきそうなほどそわそわとして落ち着かない。
 いや、原因は分かっている。
 だっていつもなら、この時間帯には彼がいた。
 寝る前は必ずと言っても過言じゃないぐらい、一方的に与えられる快楽に酔わされていた。
 習慣化していたものがいきなり断たれると、途端に調子が狂ってしまうのと同じ原理で、立香の躰は「甘美な当たり前」を探し続けている。
 ──どうしよう。かなり恥ずかしい……。でも、しないと……眠れそうにない……。
 そろりと服の中に手を伸ばす。躊躇いがちに触れたのは自らの胸。
 最も敏感な先端は、すでに固く尖りきっており、もたらされる刺激を今か今かと待ち望んでいた。

「んっ……あ、ん……」

 こんなこと、一人でしちゃダメなのに。
 自分を律する意識に反して、立香の手は止まる気配がない。まるで他人が憑依してしまったんじゃないかと勘違いしてしまうほどだ。
 熱は、弄れば弄るほど、昂りを増していく。
 これは仕方ないこと。だって一度ちゃんと達しないと上手く眠れないんだから……。
 誰に聞かせる訳でもない、不必要な言い訳を並べ立てる。その間にも躰は胸だけじゃ物足りなかったらしく、片方の手が知らぬ間に花芯を下着越しに緩くなぞり上げていた。

「あ! んぅ……ふ、ぁ……!」

 痺れを伴う快感に苛まれ、なけなしの理性が遠のいていくのを感じた。
 恥じらいよりも、もどかしさが勝って、立香は脚を少しだけ開き、胸を弄っていた手で花芯を直に触れ始める。
 余った手で潤ったソコに指を抜き差しし、いつも彼がするように高めていく。

「は、ぁ……んぅ……んっ、あ……あっ!」

 もっと、もっと欲しい。
 自分のものなんかじゃなくて。
 彼の指が、舌が、視線が、声が。
 全てが愛しくて、貪欲なまでに欲しくて。
 もうきっと、自分ではどうすることもできない。
 ぐちゅぐちゅとかき混ぜる音が激しくなる。
 すぐそこにある果ては、狂うほど追い求めていたはずなのに、まるでよくできた偽物を手にしてしまったかのように味気なく感じた。

「あ、あっ……ロビン……ロビンっ!」

 少しでも本物に近付きたくて、達する瞬間に愛しい名前を呼ぶ。膣内がきゅうっと締まり、奥からはとめどなく透明な液が溢れ出た。しとどに濡れてしまった指を引き抜き、霞む暗闇の中でぼんやり見つめる。

「……何してんだろ、私」

 愛液でひやりとするベトベトの手。荒い呼吸を繰り返す自分に激しく落ち込む。躰は火照っているにもかかわらず、頭の中は氷水を浴びたかのごとく冷静だ。一人ですると、こういう弊害があるから嫌になる。追い求めているときは必死な分、きっと余計にそうなってしまうに違いない。

「うー、バカバカバカっ。全部ロビンのせいだ!」

 だって毎晩毎晩ドロドロになるまで、これでもかってぐらいに弄るから! 付き合う前は、こんなにふしだらじゃなかった……はずだ!
 ブランケットを頭からすっぽり被った立香は、疼きを訴え続ける躰を持て余しながら、己に快楽を教え込んだ弓兵の幻影に対し、熱っぽく熟れきった息の罵詈雑言を浴びせていた。



恋愛初心者な女の子はカワイイ。
あ、次は本番です。
2022.12.18