Step2
・細かい捏造あり
・マイルームは二部のお部屋を想像していただければ。ベッドの横に読書スペースあるのいいですよね。憧れです。
読書スペースに据えられたデスクライトの暖色光が、むかいの白い壁に大きな影を映し出す。
深夜の静謐に包まれたマイルームのベッドの上。時折響くのは重ねられた唇から生まれる水音と、鼻に掛かったような立香のくぐもった声。一つになっていた影は、間を置いてから、ゆっくりと二つに分かれていった。
「結構慣れてきました?」
ロビンの密やかな問いかけが落ちる。濡れた立香の口元を、彼の親指が優しく拭った。
「う、ん……まだドキドキするけどね」
ジンジンと熱を孕んで腫れているような錯覚を覚える自分の唇。喋ったり、物を食べたりする器官がこんなにも敏感だったとは。立香は思いも寄らず、ただただ驚いていた。
こうしてロビンと夜を過ごし始めたのは一週間前から。初めてキスをして立香が先を拒んだ日から、今日までずっと。緊張はするものの、未知への恐怖は着実に薄らいでいた。
「そんじゃあ……ちょっとだけ先に進んでみますか」
立香の上に覆い被さっているロビンは、くすりと笑いながら提案してきた。
彼の格好はとてもラフなものだ。いつも身につけている緑の外装はどこかへと消え去り、上半身は黒いタンクトップだけ。左手に巻かれた当て布も、右手のグローブもない。下はいつものスタイルだが、ベッドに上がる時にブーツも脱いだため、足先のわずかばかりだが肌の露出が増えている。
たったそれだけのことだというのに、普段とは違うロビンの格好に、立香の鼓動が大きく脈打つ。けれど、これは以前とは少し違う感情のため。押し倒され、戦慄いていた心臓の動きとは明らかに違う。
きっと、これは───。
立香は少しだけ逡巡した後、提案に対する返答として、一度だけしっかりと頷いた。
「大丈夫ですよ。いきなり最後まではしませんから」
覚悟を決めたような鬼気迫る立香の表情が可笑しかったのか、含み笑いを隠そうともせず、ロビンは立香の額に口付けた。
まだまだ子供みたいな扱いだ。立香は思わず頬を膨らませる。しかしそんな行動自体も子供っぽさを助長させてしまう一因となってしまうのだから如何ともしがたい。
ロビンの唇は立香の額から目元と頬を伝って下へ。
……首筋に息がかかる。
ぞわりと全身が震えた。
「あっ……」
漏れ出た立香の声に気をよくしたのか、ロビンが首筋をぬるりと舐めた。
ゆっくり鎖骨へと這っていく唇と舌は、何も知らない立香の体へと快感を植え付けてくる。時折、歯で緩く噛まれたり、ちゅうっと吸い上げてくるのだから堪らない。むず痒さから逃れたくて身を捩ったが、しかし本気の抵抗ではないため、ベッドのシーツに少しシワを作るだけの微かな身じろぎとして終わってしまった。
するりと夜着の裾からロビンの大きな右手が入り込んできた。スポーツタイプのブラジャーの上から胸の形を確かめるように優しく触ってくる。
何だかマッサージしてるみたいだ。
緊張しながらもロビンの行動を観察していたら、顔をあげた彼と、はたと目があった。
瞬間、ニヤリと笑う弓兵。
───ん、何?
よく分からず怪訝な目で見返していると、再びキスで口を塞がれた。
それと同時に悪戯な手が下着の中に滑り込んでくる。それは可愛らしい愛撫から一転、下から揉み込むような強めの刺激に変化していく。
「ん、あ、んぅ……ふ、ぅ……」
絡み合うキスと共に胸を揉まれる。大胆になっていくロビンの手は服を捲り、なだらかな双丘を露わにした。
ひやりとした外気に肢体が震える。
顔を離したロビンが、じっと見下ろしてくるのを感じた。
───どうしよう、見られてる……。
小さくはないけれど決して大きいとは呼べない自分の胸。ロビンの視線に耐えかねて、立香は両手で胸を隠そうとした。
しかしロビンがそれをみすみす見逃すはずもない。隠しきるよりも早く、彼の手が立香の手首を拘束し、シーツへと縫い留めた。
「は、恥ずかしいから、あんまり見ないで……」
赤くなった顔を明後日の方向へと逸らしながら立香は懇願する。
「イヤっすね。付き合ってる特権っしょ? せっかく形がいい胸なんですから、じっくり鑑賞させてくださいよ」
やんわりと、けれどキッパリ拒否するロビン。そのあいだも視線は外されることなく立香の胸に釘付け。というか、さらりと褒めてくるあたり経験の違いが浮き彫りになったような気がして、少しムッとしてしまう。まあ、事実だから仕方ないことだけれど。
立香が抵抗しないことを悟ったのか、ロビンが手の戒めを解いて胸に触れる。男らしい節くれた長い指が立香の胸を包み込むように撫でた。
「……ん、あっ、あ……んんっ!!」
やわやわと双丘を揉んでいた指が、不意に先端をキュッと摘んだ。固く尖った胸の飾りは驚くほど敏感になっていて、ロビンが摘んだり捏ねたりするだけで、躰が無意識にビクビクと反応してしまう。
「んっ、ダメ……。むね、いじっちゃ……や、ぁ……」
疼きを伴う快楽が胸から腰へと落ちていく。比例して上がっていく呼吸の合間に、うっすらと涙が浮かんできた目で静止を訴えかけた。
ロビンの悪戯が止む。ライトのオレンジ色に染まった碧眼が立香の琥珀色と交差する。
よかった、止まってくれた。
と、ほっとしていたのも束の間……
「んなこと言われると、余計に弄りたくなっちまうんですよねえ……」
ロビンの顔が片胸に近付いてきて、そのまま先端をパクリと咥えられた。
「あっ! や、あ、あ!」
ザラザラとした熱い舌が上下左右に尖りを嬲るたび、躰が意志に反して小さく跳ねる。もたらされる刺激から逃れようと背筋を逸らしたけれど、逆に胸を彼の方へ突き出す形になってしまった。
じっくり舐められ、強く吸われ、合間に甘く噛まれる。口に含まれていない方は、大きく弧を描くように揉まれたり、指先で先端をクリクリと弄ばれた。
「もぅ、や……やだ……。あ、ぁ……んぅ!」
息も絶え絶えになっていると、満足したロビンが一際大きく吸い上げて胸を解放してくれた。上下する胸の先が唾液でいやらしく濡れている。
「立香、ちょっと後ろ向きで座ってくれます?」
快楽で溶けかけていた立香の上体を引き起こし、ロビンが背後から抱き込むように座った。立香は背中にロビンの体温を感じながら、何をされるのか分からず、ただぼんやりとしていた。
「触りますよ」
何を、という主語がない。代わりに立香の腹部に置かれたロビンの手。伸びていく先は夜着であるショートパンツの中の、さらに、下。
ロビンがそっと熱く湿ったソコを指で触れた。
「うわ、すっげー濡れてる。キスと胸だけでこれって……最後までしたらどうなるんですかね」
ぐちゅりと淫猥に音を立てる秘部の音とロビンの容赦ない煽りに、カァっと顔中に熱い血が集まってくる。
与えられた刺激が全て下腹部に集中していることは意識の片隅で理解していた。しかし改めて指摘されると恥ずかしいことこの上ない。
「自分で触ったことは?」 耳元にロビンの熱い息がかかった。
「えっ!? え、と…………ある、けど……」 やや考えてから羞恥を追いやって肯定する。
「その時ってイけました?」
とんでもないこと聞かないで欲しいんですけど!? 返答に困るじゃん!
立香が振り向いて睨みつけようとした矢先、ぬめりを帯びたロビンの指が一番敏感な部位を撫で上げた。
「あっ! あ、あ……んっ、や、ぁ……」
「ほら立香。どうなんです? 上手に気持ちよくなれました?」
素直に答えるまで聞き続ける気配と、止まらない指先の動きに、立香は必死に頭を縦に動かす。
つまりは自慰行為の有無だ。立香も年頃だし、一人でしたことぐらいはあった。
しかし自分で触る時と他人に触られる時では刺激の種類がまったく違う。思いがけない動きや、予想できない強弱に翻弄されるのが原因か。興奮度合いが違うのか。あるいはその両方か。
どちらかなんて知らないけれど、明らかに自分で触るより、ロビンに責められた方がずっと感じてしまうのは確かだった。
「へぇ……。いつか見てみたいっすわ、立香が一人でするところ」
「そん、なの……っ、絶対、見せるわ、け……な……あっ、あ、っ!」
耳元で吐息交じりに囁かれた辱めに反論する言葉は、少し速度を上げた指の動きにかき消された。
蜜壺からはどんどんいやらしい液が溢れ出てくる。それはロビンの指にまとわりつき、さらに滑りを良くして秘芯を上下左右に擦り上げてきた。
「あ、だめ……ん……っ! や、やだぁ……!」
人前で達してしまう気恥ずかしさで目尻に涙を浮かべながら、いやいやと首を横に振る。
朱色の髪が彼の躰を打っても、指が止まることはない。
腰に回された逞しい腕を掴む。
やめて欲しくて押しのけているのか、それとも先にある果てが欲しくて縋りついているのか、立香にはもう分からなかった。
「あ、あ、ああっ! んぅっ!」
びくん、と立香の体が大きく跳ねて、全身に力が入る。目の奥が電流でも走ったみたいにパチパチと爆ぜた。高みに放り出されたような快楽の波に襲われ、直後、急速にどこまでも堕ちていくほどの多幸感に包まれる。ハアハアと息をしながら、立香は弛緩した躰をロビンの胸板にぐったりと預けた。
えらいえらい、と頭を撫でてくるロビン。
イってしまった……。一人でするときの比じゃないくらいの深い快楽に溺れそうになる。
先ほどのロビンの言葉はあながち間違いじゃないかもしれない。本当に最後までしてしまったら、私、どうなってしまうんだろう?
「……意外と余裕ありそうなんで、もうちょい続けますね」
「え……何を……?」
するの、と問う前に、立香はベッドへと再び押し倒される。ついでに夜着と下着を剥がされてしまった。あまりの素早さに、抵抗する暇なんて全然なかった。
割り開かれる両足と、足の付け根に埋まるロビンの……。
あらぬ場所に彼の息がかかる。
「や、ヤダ! ロビン、お願いやめ……っ! あっ、ん! ん、んぁ……あ、あ……っ!」
何とか引き剥がそうとロビンの頭を必死に手で押すけれど、うまく力が入らず、ただ金色の髪をかき混ぜるばかり。
ロビンの柔らかい舌が秘芯を撫でたり弾いたりするように愛撫してくる。濡れそぼった場所に指を一本だけ入れられ、裏側から優しくなぞるように何度も抽出を繰り返される。
立香の口は閉じることを忘れて、あえかな声を奏で続けた。もたらされる快感は蓄積して、また大きな波が襲ってくる。
グチュグチュと抜き差しされる太い指。
ぷくりと赤く充血した秘芯を軽く吸われた瞬間。
立香は今まで感じたことのない絶頂に襲われた。
「───っ、あ……っ!」
あまりの快感に声も出ない。
全身から汗が吹き出し、心臓は血液を送り出すのに余念がない。泥濘は埋まったままのロビンの指をきゅうきゅうとはしたなく締め付けていた。
絶頂の余韻に浸りながら、全力疾走したあとみたいな荒い息を繰り返していると、ロビンが指を引き抜き、自身の口元をぐいっと拭った。
「今日はここまでにしときますか」
「えっ!? あ……」
そういえば最後まではしないって言ってたっけ? てっきり、そのままの流れで続きをするものだとばかり思ってた。
近くにあったティッシュで後処理をするロビン。どこか上機嫌なのは何故だろうか。
いや、そんなことよりもだ。
「私ばっかりされるのは違う気がするんだけど。ロビン、辛いでしょ? ───やっぱりこのまま最後まで……」
怖さは多少残っているが、このまま彼を放置するのも気が引ける。だって、さっき後ろから抱かれた時、その……気付いてしまったから。腰に当たっていた、熱い楔に……。
ロビンは驚きに見開いた目をぱちくりと瞬いた。そしてすぐに軽く笑い声を上げた後、立香の頬に長めのリップ音を贈った。
「んー、オタクに慣れてもらうっていうのが一番の目的ですし、オレの心配はしなくていいですよ。どうとでもなりますんで。それより明日も早いんだ。いつまでも遊んでて寝坊したら管制室の奴らにどやされますぜ」
このまま寝ましょうと倒れ込んできたロビンに、ぎゅうっと抱き込まれた。ついでにがぶがぶと首筋を噛まれて、思わず笑い声を上げてしまう。たったそれだけのじゃれあいで、先程まで場を支配していた淫靡な雰囲気も、すっかりどこかへ吹き飛んでしまったようだ。
───でも、ちょっとだけ……。
切なく疼く腹部の奥。自分では触ることは出来ない場所を皮膚の上からそっと撫でる。
立香は「私って、もしかして淫乱なのかな?」と、内心で勝手に落ち込むのであった。
どうでもいいこだわりが強すぎて書くペースがめちゃくちゃ遅い笑
年内に終わるといいなぁ……。
2022.12.2