星と囁く夜をのむ Plus

 木の上から着地し、その勢いのまま立香は地面に下ろされた。
 さて帰ろうかという雰囲気を醸し出したのも束の間、ぐいっと手を引かれる。思ってもみなかった力のベクトルに抗えず、後ろ向きにたたらを踏んだ。
 背に当たったのはゴツゴツとした樹皮の感触。眼前には滅多にお目にかかることのない、ひどく機嫌のいい表情で、こちらを見下ろすロビンがいる。
 しかも彼の左手は立香の右手首を掴んだまま、もう片方は立香の顔の横で、手のひらを木に当てていた。

「ちょっと、ロビンフッドさん?」

 名前をことさら丁寧に呼ぶ。
 もう人理修復最初期からの長い付き合いだ。彼の考えていることが手に取るように分かってしまう。だからこそ、わざと咎めるような口調で彼の名を呼んだ。
 しかし返事はない。やっぱりニコニコと、一見すれば邪気のない笑みを端正な顔に貼り付けている。

「あの……早く帰らないとダメじゃないかな?」

 バレないうちに、と思いつく限りの理由をあげてみる。

「そんなに慌てなくても大丈夫っすよ」

 全然通用しなかった。というか、どこから来るんだろうかその自信は。
 ロビンの右手が立香の首筋をたどり、胸の膨らみに落ちていく。服の上から持ち上げるように揉まれ、ちょうどその奥深くに位置する立香の心臓がドクンと跳ねた。

「ね、ロビン。ここ、外だから……」

 だからやめてと唯一自由な左手で押し返しながら、懇願するようにロビンを見る。

「上目遣いで、そのセリフ。すげぇそそりますね」

 完全に逆効果だったらしい。
 左の手首も掴まれた。頭の上で両手を一つに纏められた挙句、彼の片手で容易く木に縫いとめられてしまった。
 まるで磔にされているみたいだ。あるいは、ピンで留められた哀れな虫だろうか。
 最後の抵抗として身を捩るが、それさえもキスで防がれてしまえば、立香に出来ることなど残されていない。せいぜい、鼻にかかった声を上げることぐらいだった。

「んっ……ふぅ……ん、……んぅ……」

 ロビンの舌が、ぬるぬると蠢いて口内を犯していく。甘く蕩けていく思考の中、服をはだけさせられた。ひやりとした夜気と共に、長い指がするりと侵入を果たす。敏感な突起を弄られ、捏ねられ、優しく弾かれた。

「あ、ん……ん、ぅ……ゃあ………」

 口と胸に与えられる快感に気を取られていると、急にロビンの片足が足の間に割り込んできた。グリグリと太腿で刺激され、思わず顔を背けてキスを振り解いてしまった。

「やっ! あ、それ……やだぁっ!」

 上擦った声で制止を求めたが、止める気配は当然のごとくない。
 せめて足を閉じようと試みたけれど、むしろ押し付ける形になってしまい、余計に快感が増すばかりだ。

「もうかなり濡れてません? さっきのキスだけで、そんなに感じました?」

 湿った感触が服越しに伝わったのだろう。ロビンが愉快そうに立香の羞恥心を煽ってくる。
 彼が言っているのは今しがたのものではなく、木の上でしたお礼のキスを指している。口にしてくれと強請られた際、久しぶりだったこともあり、かなり長く、深いものにまで発展してしまったのだ。

「ちがっ、ちがう! …………あっ! 指、入れちゃ……っ!」

 それだけで興奮しただなんて思われたくなくて、立香は否定の言葉を紡ぐ。
 言葉を無視したロビンの指が胸から離れる。今度は黒いプリーツスカートの裾を捲って脚の間に伸びてきた。
 わずかに性急な動きをする指は、脱がす時間すら惜しいのか、下着をつけたままの濡れそぼったソコへ滑り込んでくる。ぐちゅぐちゅと淫猥な音をあげながら、ナカをかき混ぜられた。

「違わないでしょ。つか、何もなくてこんなに濡れてたほうがエロいと思いません?」
「あっ、あ、あ……ん、……んっ!」

 長い指を、くっと折り曲げられ、花芯のちょうど裏側を執拗にゆるゆると擦られる。決して強くない力のはずなのに、たったそれだけの刺激で、全身の自由が奪われてしまったみたいだ。いつの間にか拘束も解かれ、立香の両手はロビンの肩口に縋り付くものに変わっている。
 神経がそこに集約されているような、むず痒い感覚が襲ってくる。
 体が勝手に与えられる快感を享受し、胎の内側に蓄積させていく。
 脳の奥がじわりと焼け付き、視界がチカチカと明滅し始めた。

「も、やっ……い、く……やだ………」

 胸を揉まれ、首筋に舌を這わされ、最も弱い内側を攻められ、限界が近づいてくる。
 だけど、ここは屋外だ。
 一欠片の理性から生まれる背徳感から、立香は必死にかぶりを振って快感に抗っていた。
 そんな立香に気付いたのか、ロビンは、ふと軽く笑う。
 そして耳元で囁いた。

「どうせ誰もいませんよ。だから……」

 ───好きなだけイってください。

 それが引き金になったのかは分からない。もともと、もう耐えられないぐらいには切羽詰まっていたのだ。
 言葉の毒を流し込まれると同時に、立香の口から意味を為さない、一際高い嬌声が漏れ出た。体に痙攣が走り、その中心であるナカに埋め込まれた彼の指をきゅうきゅうと締めつける。
 波が去った後も、愛液で潤ったソコを指が行き来する。その度に立香の腰が、一人でに、物欲しげに揺れた。
 そこでやっと指が引き抜かれた。ぐったりとした体を支えられる。ロビンの広い肩に頭を置いたまま、立香は荒い息で恨み言を吐いた。

「ロビン……。最初から……このつもり、だったでしょ」
「さぁ? どうですかね」

 ぐるりと体を反転させられる。今度は樹皮に縋りつく格好になった。下着が横にずらされ、熱く膨らんだものが押し当てられる。
 ゆっくり押し広げられていく感覚と、後ろから登ってくるゾクゾクとした快感に、勝手に背が撓った。

「あっ、ロビン! ちょっと、ま……って!」

 ついさっき達したばかりで、いまだ収縮を続けている場所へ、彼の楔が容赦なく分け入ってくる。
 肉壁がしっかりと刺激の火種を拾い上げ、立香の脳を焼いていく。目の奥に徐々に火花が散る感覚が走った。

「い、ま……ほんと、に……ダメ……だからぁ!」

 嬌声混じりの立香の制止に、ロビンは口端を吊り上げた。

「敏感になってるって? でしょうね。中が締めつけてきてますよ」

 止まるどころか、さらに腰を一際強く押し付けられた。一気に貫かれた衝撃に、甘い声さえ上げることができない。立っているのがやっとで、気を抜けば膝から崩れ落ちてしまいそうになるのを必死で堪えた。
 一定のリズムで腰を動かされ、立香の目が快楽の涙でぼんやりと滲んでくる。

「ひっ! あ、あっ、あ…っ! や、やだ……あっ!」
「立香……立香……!」

 熱に浮かされたように名前を呼ばれる。
 固定され、揺さぶられ、高まっていく。
 徐々にナカを行き来するロビンの熱が膨張していくのを、蕩けきった壁と頭で感じた。

「くっ……立香、中に……出しますよ」
「あ! あっ! や……あぅ! ん──っ!」

 激しい腰の動きと共に熱い奔流が最奥に叩きつけられる。立香も堪え切れず、二度目の絶頂を迎えた。















おまけ

「ダメって言ったのに……」

 事後の余韻冷めやらぬまま、立香は頬を膨らませてロビンを糾弾した。
 既に楔は引き抜かれているものの、彼が放った白濁と自分の愛液で、下着が意味をなさないほど濡れてしまっている。あまり気持ちのいいものではないし、正直もう歩きたくないぐらいには不快感が付き纏っていた。

「いやぁ、すんません。しばらく立香に触れてなかったもんで、ちょっと限界が来てました」

 ロビンにしては素直な言い訳に、うっかり絆されてしまいそうになる。
 いや、ここで許したら絶対にダメだ。毅然とした態度を貫かなければ、弱みにつけ込まれ、流されてしまう!

「だからって外でするなんて……。もう次は絶っ対しないからね! 分かった!?」
「……でもいつもより感じてましたよね。本当はこういうの、好きだったり───」
「わああああ! もうそれ以上言わないで! 早く帰るよ! はい、ロビン運んで!」
「はいよ、仰せのままに」

 歩きたくない意志が伝わったのか、それとも外で致したことへの罪滅ぼしのつもりなのか。ご機嫌取りの意味合いも含まれているであろう返事の後に、ロビンの腕が伸びてきて、軽々と横抱きにされた。
 こうなった元凶に身を委ねるのは釈然としないが、それならば、いっそのこと運ばれてる間に寝てしまおう。
 服越しに伝わってくるロビンの体温と、匂いと、ゆらゆらとした心地よい振動で、瞼が重くなってきたし。

 閉じた視界の中、ロビンが息をひそめて笑った気配が伝わってきた。完全に眠りに落ちてしまう前に、立香は、調子に乗らないのと呟きながら、思いっきり彼の腕を抓ってあげた。



サイト一周年記念が年齢指定もの、しかも若干特殊ってどうなのよ。
どうしてこうなった……。
どうしてもこうなってしまった!
あと初めてえっちぃの書いたけど難しいな! 戦闘よりも難しい気がする。気のせいか?
あ、個人的なハイライトは立香ちゃんの上目遣いです。女の子に上目遣いされたい。
2022.3.27