ハルジオン 6

 しばらく進んでいると、急にアーチャーの動きが止まった。今いるのは、ちょうど学校へ続く長い坂の中腹にある、どこかの民家の屋根の上だ。ちらりと見上げれば、彼は学校とは別の方向をじっと見つめている。

「何か気になるものでもあった?」

 視線の先は街の北側に向けられていた。そちらにあるものと言えば、リツカが生まれるよりずっと前からある、古い商店街くらいしかない。

「マスター、ちょいと行き先変更してもいいですか?」
「いいけど、あっちには商店街ぐらいしかないよ。何しに行くの?」
「どうも召喚されたのはオレだけじゃないらしいんでね。助っ人がいるなら助力を頼みたいなと思いまして」
「それって、アーチャーの他にもサーヴァントがいるってこと?」
「そういう事。多分聖杯に引っ張られる形で召喚された、はぐれサーヴァントだな」
「戦力は多いに越したことはないと思うし、アーチャーが言うなら行ってみようか」
「よしきた」

 アーチャーは軽く返事をすると、再び屋根伝いにほぼ空中の道を進み始めた。
 ちなみに、こんな雑談が呑気に出来るのもアーチャーの宝具のお陰らしい。何と身に纏っている深緑の外套がそれにあたるらしく、発動すれば相手に全く悟られないレベルで存在を消せるという。透明マントと呟けば、変な名前つけねぇでくださいと怒られたのは数分前の話。
 今は上へ、下への浮遊を伴う移動に若干気分がブルーになってきたので、大人しくアーチャーに横抱きにされたまま一言も口を利いていない。というよりも余裕がないと言った方が正しい。学校へ行くときは、時間がかかってもいいから徒歩でいくように頼んでみよう。
 必死で気持ち悪さと戦っているうちに、何事もなく商店街へと着いた。そっと地面に降されたけれど三半規管が狂ってしまったらしく、軽くふらついたところをアーチャーに支えられた。

「大丈夫っすか?」
「……大丈夫。ちょっと、目が回っただけ」
「意外と繊細なんっスね」
「あんな激しいアップダウン繰り返されたら誰だって酔うわ! 人を軟弱みたいに言わないでよ!」

 これでも運動神経は良い方だ、と反論すれば、アーチャーは揶揄うように笑い声を上げた。

「そういうことにしときますわ。そんじゃあ、助っ人さんを探しに行きますかね」

 スタスタと商店街の中を突き進むアーチャーに置いて行かれないように、リツカは携帯電話のライトで前方を照らしながら、慌てて後に続いた。
 この街の商店街は昨今の情勢の波を被って、例に漏れず衰退の一途を辿っている。それでもまだ存在し続けているのは、近隣住民の生活に根付いた商品を、昔から変わらず提供し続けているからだ。例えば街の電気屋だったり、惣菜店だったりといった、近くにあったら凄く便利な店がずらりと軒を連ねている。
 もっとも、客も店の人も全員糸の切れた人形のように、そこかしこで寝てしまっているので、いつものような細々とした活気さえもなく、辺りはひっそりとした静寂に包まれていた。
 本当にこんなところにサーヴァントがいるのだろうか……。
 半信半疑で歩いていると、商店街のちょうど真ん中に位置する惣菜店の前で、何か人影のようなシルエットが動いていた。

「あ、だめですメジェド様! そんなに食べてはお腹を壊してしまいます! ああ、お体が油でベトベトに……。あわわわ」

 ひそひそと何事かをショーケース前で呟いている人物は、必死に目の前の小さな白っぽい生き物を捕まえては、陳列されたコロッケから引き剥がそうとしている。

「ねぇ、アーチャー。まさかあのグラマラスでウサ耳つけてる女の人がサーヴァントなの?」
「間違ってもウサ耳なんて言ったらダメっすよ。意外と短気な女王様なんですから……」
「む、そこ! 聞こえましたよ! これはホルス神の羽を象った現人神としての大事なシンボルなのです。決してウサ耳ではありません。私の髪の一部ですので、二度とウサ耳などと形容しないように」

 つらつらと厳しい声色で言葉を紡ぐ目の前の人影が、勿体ぶるように、ゆっくりと近づいてくる。
 コツンと高い靴底を鳴らして対峙した相手は、リツカと同じくらいの背をした青い髪の女性だった。褐色の肌を惜しげもなく晒しており、金色の装飾や薄い布を纏った出立ちは、一目でエジプト辺りの出身であることが伺えた。

「この死霊漂う夜の街において何事もなく歩けているようですね。なるほど、サーヴァントとマスターですか」
「話が早くて助かるね、キャスターの女王様は」

 アーチャーは目の前のサーヴァントを知っている口振りで話している。怪訝な顔をしたのはキャスターと呼ばれた女性の方だった。

「……私が何者か、まるで分かっているような口を聞きますね。不敬ですよ、疾く名乗りなさい。ついでに頭を深く垂れなさい」
「失礼しました。オレはアーチャー。こっちはオレのマスター。女王におかれましては、敵対する理由などあるはずもなく。出来ればこの怪異を解決するべく、協力を仰げればと……」
「……余りにも自然に頭を下げるので些か拍子抜けですが、弓兵は話が分かるようですね」

 ちらりと視線を向けられ、頭を下げつつ自分の名を告げた。

「桜井リツカです」

 従順な態度が功を奏したのか、目の前のアラビアンなキャスターは、ふふんと上機嫌に鼻を鳴らす。次いで、彼女は手に持っていた長い金色の杖を地面に一つ打ち鳴らした。すると先端から眩しい光球が生まれ、辺りの闇をぱっと取り去った。思わずアーチャーと共に顔を上げる。

「おー、明るい!」
「私を誰と心得ます。ホルス神の化身なれば、これぐらいの魔術など造作もないことです」

 ちょっと得意げになっている彼女の後ろで、明るい光の下、謎の生き物がわちゃわちゃと動いているのが見えた。白い布を被ったそれらは、店に並べられてるコロッケに群がっている。

「何か後ろでもぐもぐしてる方達がいらっしゃるのですが……」

 安全なものか危険なものかの判断が付かず、キャスターに状況を伝えれば、彼女は慌てた様子で白い生き物達を諌め始めた。

「メジェド様! だから食べ過ぎはよくないと! 勝手に食べてしまっては、お店にも迷惑が……」
「メジェドっていうんですか?」

 近付いて見てみれば、白い生き物の布部分にはマジックで落書きしたような目玉がついていて、中からは二本の足がニョッキリ伸びている。それらは店のコロッケがとても気に入ったのか、一心不乱に貪っていた。どうやって食べているのかは、この際気にしないことにする。

「様をつけなさい! 不敬ですよ! あああ、どんどん食べ物がなくなっていってる」

 どうやら無断で店の惣菜を食べてしまうのに心を痛めているらしい。女王というから不遜で傲慢な人物かと思えば、案外律儀というか、真面目な性格をしているみたいだ。
 随分庶民的な感性の持ち主に生暖かい微笑みを送りながら、制服のポケットに手を突っ込み、小さな財布を取り出してお金を取り出す。何かあった時のために持ち歩いていたのだが、役に立ってよかった。
 無人のレジに適当にお札を置いて、メジェド様たちを捕まえているキャスターに笑いかけた。

「これで心置きなく食べられますよ。体についた汚れは後から拭けば大丈夫ですし、皆で食べれば量も気にしなくていいですよ!」
「えっ、あっ……そう、なのでしょうか」
「そうです! 私も死にそうなぐらいお腹空いてたから一緒に食べましょう! はい、これどうぞ!」

 包み紙に包まれたコロッケを一つ取りキャスターに差し出せば、しどろもどろになりながらも彼女は受け取った。

「あ、ありがとうございます」
「どういたしまして。アーチャーも食べる?」
「いや……オレは、いいっすわ」

 アーチャーは肩を震わせて横を向いている。多分笑っているんだろうけど、どこに笑う要素があったのか分からない。というか、よく笑う人だなぁと思う。召喚してから彼はことあるごとに笑っている気がする。もしかして笑い上戸なのだろうか?
 二人と数人のメジェド様でコロッケを食べていたが、早々に食べ終わったキャスターがコホンと咳払いをした。

「何故か思いがけず献上品を受け取ってしまいました。メジェド様もご機嫌ですし、下手な借りを作ってしまうと、女王としての威厳が保てません。そこの人間、リツカと言いましたか?」
「ふぁい。ほうでふが」
「早くコロッケを食べてしまいなさい! 緊張感に欠ける人ですね! 不本意ではありますが、一時的に力を貸してあげましょう。──丁度よく、あなたの生気を感じ取った死霊達が集まって来たみたいですし」

 キャスターが厳しい目つきで、きっ、と商店街の上を睨んだ。
 商店街の天井はアーケードが据えられている。それは太陽光がよく入るように半透明のプラスチックで作られているのだが、街の空全体が闇で覆われており、向こう側は黒一色に塗りつぶされている。しかしキャスターのお陰で商店街に光が溢れているため、アーケードのすぐ外側の景色は辛うじて窺い見ることができた。
 何か、大きな黒っぽい影が蠢いている。それはリツカ達のすぐ頭上でピタリと止まると、アーケードに衝撃を加え始めた。がん、がんと耳を塞ぎたくなるような轟音が響く度に天井全体が不穏に揺れる。

「来ますよ! 下がりなさい!」

 キャスターの声が響いた後、一拍置いて、ばきっという凄まじい破壊音と共にアーケードが破れた。破れ目からは、あの小さな死霊達がわらわらと虫の大群のように押し寄せ、雪崩れ込んでくる。
 人間というものは不思議なもので、怪我をする直前や危機が迫る直前、周りの事象がコマ送りになったかのようにゆっくりに見えることがある。脳の処理速度が格段に上がるかららしいのだが、正に今、脳がフル回転しているみたいだ。
 ゆっくり近づいてくる死霊の群れを見据えながら、リツカは大きく叫んだ。

「アーチャー!」
「分かってますよっと!」

 アーチャーはリツカを抱え、大きく後ろに跳躍した。直後にリツカが立っていた場所、惣菜店の前が死霊で埋め尽くされ、赤茶けたレンガの歩道に痛々しい大きな穴が穿たれる。
 そのままそこにいたらと思うと、ぞっとしない光景だった。
 キャスターはリツカ達とは反対側に逃げている。五体満足な所を見ると、怪我はないらしい。
 死霊達はリツカを仕留められなかったことに気が付いたのか、空洞な目をこちらに向けて、四方へと散らばり襲いかかってきた。

「数が多い! アーチャー、一気にばぁっと倒せない?」
「期待してくれんのはありがてぇんですが、こちとらしがない弓兵でね。得意なことと言ったら、毒を盛ったり、闇討ちしたり、騙し討ちしたりってとこですよ!」

 リツカを肩に担いだまま縦横無尽に襲いくる死霊を器用に避けつつ、アーチャーは力及ばずすいませんねぇ、と嫌味たっぷりに言い返してきた。

「いや、弓兵だよね。役割的には後方担当だから合ってるんじゃない?」
「そうだよな! そうなんだけどな! そうじゃねぇ奴らの方が多かったんですよ!」

 何故か己の正当性を叫ぶように語られる。過去に何かあったんだろうか……。

「このままでは埒が空きませんね。二人とも、こちらに引きなさい! そこにいては邪魔になります!」

 キャスターの合図を皮切りに、アーチャーは死霊の群れを掻い潜り、キャスターの方へと避難する。
 隣に立つキャスターはそれを確認した後、大きく一歩踏み出した。

「さぁ、一人残らず冥府へ還して差し上げましょう。来ませい!」

 死霊が身も凍るような咆哮をあげつつ、空中を滑るように迫ってくる。しかしキャスターは慌てることなく、杖を一つ打ち鳴らした。

「屍の鏡、暗黒の鏡……。扉となりて、恐怖をここに。冥鏡宝典(アンプゥ・ネプ・タ・ジェセル)!」

 キャスターの背後がぼんやり光った。空間がぐにゃりと歪み始める。その歪みから目を見張るほど大きな魔法陣と、それより少し小さめの丸い鏡が、どこからともなく出現した。その鏡の中から髑髏の霊体がいくつも出てきては、襲ってくる死霊の一体、一体に目標を定め真っ直ぐ飛んでいき、がぶりと噛み付いた。髑髏に噛みつかれた死霊はまるで最初から存在しなかったかのように、黒い塵を残しながら霧散していった。

「……すごい」
「はー、いつ見ても壮観な宝具ですわ。ただちょいと撃ち漏らしがあるのが玉に瑕ってやつだが」

 アーチャーはリツカを地面に降ろした。髑髏に噛みつかれながらも、近づいてくる死霊へ向け右手を構える。その腕には先程まではなかったボウガンのような武器が装備されていた。
 視認できないほどの速度で放たれた矢が、そこから放たれる。矢は死霊達の体を次々と射抜き、塵へと還していった。
 アーチャーも十分過ぎるほどすごい。何十といる標的、しかも動き回っている相手に、ただの一発も外していない。
 死霊を屠る魔術。寸分狂わぬの弓の腕。リツカはサーヴァントの人離れした力に舌を巻いた。

「ほいよ、一丁あがりってね」

 最後の死霊を倒し終わり、アーチャーは弓を仕舞う。五十体近くいた死霊は、数分もしない内に全て跡形も無く消滅してしまっていた。

「私にかかれば死霊など取るに足りません。同盟者よ、怪我はありませんか?」

 キャスターが振り返り安否を確認するのだが、それには応えず、リツカはただただ震えていた。

「どうしました?」
「す……」
「ん?」
「すっごおおい!」

 キャスターの手を引っ掴み、興奮冷めやらぬままブンブンと振った。
 ぽかんと口を開けたまま、キャスターは奇妙なものでも見るようにリツカを凝視している。敬語もどこかへ吹っ飛んだまま、リツカは昂りを鎮めることなく言い募った。

「なんか、ばぁーって髑髏が出たと思ったら、あの死霊達をほとんど倒しちゃった! あれがキャスターの宝具なの?」
「え、えぇ。そうですが……」
「そっかあ! 本当にすごいなぁ! 助かったよ、ありがとう!」
「ふ、不敬ですよ! 手を離しなさい!」

 キャスターが顔を赤くしながら手を振り解こうとするので、すぐにぱっと離す。嫌というよりは照れてるんだろう。生真面目さといい、プライドの高さといい、何だか姫乃に似てる気がした。

「ごめんね、つい興奮しちゃって。アーチャーも弓の腕すごいね! 百発百中じゃん!」

 振り返り歓声を上げれば、アーチャーはまぁなと一言返事をした。リツカ達のやり取りを見て爆笑していたのか、小刻みに肩が震えていた。
 やはりアーチャーは笑い上戸な気がする。それとも私の行動が彼のツボに嵌りやすいのだろうか。自分を見せているようで、その実、あまりこちらに深入りはしない距離間を保たれているからなのか、彼の本質が未だに掴めない。

「アーチャー! いつまで笑っているのですか! いい加減にしないと、あなたも冥府に連れていきますよ!」

 キャスターは耳、もといアンテナのような髪の毛をぴこぴこと激しく動かしながら叫んだ。アーチャーはそれでやっと笑いを引っ込める。

「へいへい。冥府の女王様はおっかないねぇ。マスターも初戦闘お疲れさん。この調子で頑張ってくださいや」
「と言っても、私何にもしてないけど……」

 そう。二人の戦いを、ただ近くで傍観していただけだ。

「それは違いますよ、同盟者」

 キャスターの声にリツカは俯いていた顔をあげる。

「マスターとサーヴァントというのは魔力回路で繋がっています。お互いの距離が近ければ近いほど、その回路は強くなるのです。現世に留まるアンカーとしての役割もありますし」

 つまり、とキャスターは声高に言う。

「マスターがいなければ、我々サーヴァントは本領発揮できないのです。そしてそれは現時点で貴女だけが出来る、唯一にして最大の仕事です!」
「じゃあ私も少しは役に立ってる?」
「当たり前です。天空の神の化身たる私が言うのですよ。嘘偽りなどありません。ええ、ええ!」

 守られているだけだと思っていた。何もできない不甲斐なさが心の何処かにあった。しかし気付いていないだけで一緒に戦えていたのだと知れて、それだけで嬉しくなった。私にも出来ることはあったみたいだ。

「あら?」
「どうしたの?」
「貴女、いつの間に私と契約していたのですか? すでに魔力回路が繋がっていますよ」
「え、あれ? 本当だ!」

 何となくだが、アーチャーの他にも別の繋がりを感じる。温かな糸のようなそれは、目の前のキャスターへと伸びている。

「契約した覚え、ないんだけどなー」
「無意識のうちにやってのけたのでは? 魔力量も申し分ないですし、手間が省けていいとしましょう」

 さして重要なことでもなさげに、キャスターは、ところで、と話題を変えた。

「我々はこれからどうしますか?」
「原因究明のために、マスターの学校に行こうとしてたんですよ。少し休んだら出発しましょうかね」

 アーチャーがキャスターに簡潔に説明すると、キャスターは了承の意を込め大きく頷いた。
 直後、アーチャーが何か言いたげにリツカをじっと見つめる。

「どうかした?」
「いえ……何でもねぇです」

 そのまま踵を返すと、彼は少し離れた店の壁に寄りかかり、どこからか取り出した煙草に火をつけた。
 何だろう……。すごく気になるけれど、触れてくれるなという空気をひしひしと感じる。
 追いかけて詰め寄ることも出来ず、紫煙がゆらゆらと彷徨いながら上へと昇っていく様を、リツカは少し離れた場所から見つめていた。



 ◇



 ありえない、とアーチャーは考える。思考回路を働かせたくてタバコを吸ってみたが、衝撃の方が大きすぎて、正直煙草の味が感じられない。
 現マスター、桜井リツカ。彼女は先程あり得ないことをやってのけた。
 一度に複数のサーヴァントと契約をする。
 これは本来、高名な魔術師でも滅多にやらないことだ。いや、出来ないと言っても過言ではない。
 複数のサーヴァントと契約するのは事実上可能だ。しかし個人が持つ魔力量というのは決まっているため、それを同時にサーヴァント同士で分け合う形になる。
 するとどうしても魔力が足りないサーヴァントが発生してしまう。魔力の供給を自分で出来るサーヴァントならいいが、出来ないサーヴァントは宝具を使った時点で霊基を保つことが出来ず、早々に座に還ってしまうのがセオリーだ。だからサーヴァントの同時契約は通常行われない。
 しかし、桜井リツカは違った。いつの間にかキャスター、ニトクリスと契約を果たし、宝具を打たせながら、オレにも最初と変わらない魔力量を送っていた。
 ただ一人、過去にそれを平気でやってのけた人物を知っている。
 藤丸立香。彼女の祖母だ。
 ただし、あれはイレギュラーだ。カルデアの電力で魔力の代替を果たしていたからこそ可能な芸当だった。
 では、此度のマスターは? 一体どこから、無尽蔵に近い魔力を引っ張ってきてるのだろうか。

「まさか……。いや、そんなことあるはずない、よな?」

 浮かんだ考えにアーチャーは首を振る。しかし、それ以外の原因も思い当たらないのも事実だ。

「聖杯、か……」

 険しい顔をしながら、アーチャーは立ち上る煙草の煙をただ見つめていた。



バトルシーンって難しいな……。
練習、練習。
リツカの苗字は桜井さんにしてみました。^^b
2021.7.18